【生化学・学生向け】エネルギー以外の糖質の役割について(構造支持体・情報分子)

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糖質とは

三大栄養素のひとつで、主な役割にエネルギーになることがある。単細胞の細菌からヒトまでが同じ糖質を栄養として利用している。
糖にはエネルギー以外にも様々な役割があり、役割で次のように分類できる。
①エネルギーとして使われるもの でんぷん、砂糖
②構造支持体として使われるもの セルロース、キチン
③情報分子として使われるもの 血液型A、B、O、AB
セルロースはヒトの消化酵素で分解できないので栄養にならない。

栄養の糖

ヨウ素でんぷん反応
でんぷんはグルコース(ブドウ糖)からできている
でんぷんのままでは使えないのでアミラーゼで切りグルコースに変える。アミラーゼは酸素の一部分を切断する。

グルコースからエネルギーを得ることを異化と言う。
グルコース→6CO2+H2O+エネルギーATP
エネルギーでグルコースを作ることは同化と呼ぶ。
CO2+H2O+太陽光→グルコース(光合成)

キシリトール
グルコースに似ているため甘味がある。

マンノース
2番目の炭素に結合しているOHがグルコースと逆なのでエネルギーにならない。
繋がると食物繊維であるマンナンになる。

構造支持体の糖

グルコサミンはグルコースの2番のOHがNH2にかわったもので、不安定なので身体の中ではNアセチルグルコサミンになっている。グルコサミンが数百から数千個繋がるとキチンになる。キチンはカニの甲羅などに含まれている。
植物の細胞壁に含まれるセルロースはグルコースが多数繋がったものである。
コンドロイチンはグルクロン酸とグルコサミンが交互に連なったもので、軟骨に含まれる。

情報分子の糖

糖は不斉炭素を4つ持っているため様々な物質を作ることができ、体の中の暗号にするのに適している。

例として血液型が挙げられる。細胞膜にある糖鎖の末端にNアセチルガラクトサミンが結合しているとA型、ガラクトースが結合しているとB型、両方が存在するとAB型、両方存在しない場合はO型である。A型とB型の酵素は353個アミノ酸でできていて異なるのはうち4個である。O型の酵素はアミノ酸が255個しかなく、糖と結合しないようになっている。

また糖は細胞表面にあり、外から来たものにとっては取り付きやすい対象である。
たとえばインフルエンザウイルスは、ヘマグルチニンとノイラミニダーゼを用いて気道上皮細胞に存在するシアル酸(N-アセチルノイラミン酸)の糖鎖に結合し細胞内に入る。インフルエンザウイルスの型は、ウイルスの表面にあるヘマグルチニン16種類とノイラミニダーゼ9種類によってH1N1、H5N1というように呼ばれる。
H5を持つインフルエンザウイルスは鳥の細胞の糖に結合しやすく、基本的にヒトの細胞の糖には結合しない。ヒトの糖に結合する代表的な型はH1N1、H3N2である。それぞれス
ペイン風邪と香港風邪を引き起こす。

インフルエンザウイルスは細胞を乗っ取って自分を複製させたあと細胞外に出るが、このときヘマグルチニンが糖鎖に結合しているのをノイラミニダーゼで切断して出るようになっている。タミフルはこのノイラミニダーゼの活性部位に結合して機能をなくす役割をする。

ノイラミニダーゼ阻害薬であるタミフルのように何かに結合して機能を失わせる薬はコンピュータによる計算で作られるが、新しい薬を開発した際は副作用の程度を探る必要がある。タミフルが異常行動などで問題になったのは、タミフルが錠剤で血液に乗る薬であり身体全体に回ってしまうこともある。リレンザやイナビルは吸入式でインフルエンザウイルスが存在する喉のみに送ることができるため安全性が高い。

インフルエンザの診断は金コロイド法などで行われる。インフルエンザウイルスの抗原に対応する抗体を金コロイドの着色により目視できるようにするもので、30分ほどで結果がわかる。

ミスフォールドと糖鎖

タンパク質はアミノ酸の鎖であり機能を持たせるために折りたたまれるが、3割ほどが失敗する。折りたたみに失敗したタンパク質は鎖に戻されてもう一度折りたたまれるが、中には鎖に戻すことができないような失敗をしたものがある。そのようなタンパク質が溜まると有害になるので体外に排出するが、タンパク質は高分子なため排出するには糖鎖修飾を取り除き分解する必要がある。NGLY1はこの分解に使うタンパク質であり欠損すると様々な症状が出る。

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