人畜共通寄生虫トキソプラズマとは?わかりやすく、しかも詳しく解説

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トキソプラズマとトキソプラズマ症の概要

トキソプラズマは胞子虫類に属する単細胞の細胞内偏在寄生性原虫で、ネコ科動物を終宿主、ヒトを含む哺乳類・鳥類など恒温動物を中間宿主とする代表的な人畜共通寄生虫である。

トキソプラズマ症には先天性のものと後天性のものがある。先天性のものは妊婦が妊娠中に初感染することで胎児に経胎盤感染して起こる
。症例は水頭症、小眼球、網脈絡膜炎などで、死亡したり重い精神障害を起こす。トキソプラズマは妊婦の1%以下に感染が検出され15-60%が胎児に伝播する。後天性のものは免疫不全者がかかるもので、典型的な日和見感染症。
エイズ患者、がん患者、臓器移植患者など免疫抑制剤を飲んでいる人などの免疫不全患者に感染すると重症化する。髄膜脳炎、心筋炎、肺炎、網脈絡膜炎、皮膚炎などが見られる。エイズ患者の死亡原因理由の1,2位はトキソプラズマ脳症とカリニ肺炎。

トキソプラズマの感染機構

トキソプラズマは巧妙な免疫ハイジャック機構を持っている。トキソプラズマは宿主細胞に感染して20種類以上のGRA蛋白質を分泌する。GRA6は、NFATという分子を非常に強く活性化する。GRA6欠損トキソプラズマをマウスの足の甲に感染させてもなかなか感染が拡大せず、マウスの足の甲の好中球も少なくなる。またNFAT欠損マウスは、好中球が集まらずトキソプラズマの広がりも遅かった。すなわちトキソプラズマはGRA6によりマウスのNFATを活性化して好中球を呼び寄せている。トキソプラズマは呼び寄せた好中球に感染し、好中球をトロイの木馬として使うことでリンパ節から全身に感染を拡大する。

コメント

エイズ患者の死亡原因の1位であるということは驚きです。日和見感染のトキソプラズマが1位に来るというのは、日常生活ではほとんど意識されない私達の体の中の獲得免疫が、それほど普段大きな役割を果たしているということです。

トキソプラズマが好中球を利用して移動する方法の狡猾さにも驚きました。トロイの木馬現象が起こるためにはさまざまな免疫機構と遺伝子の仕組みが必要で、改めて生物の仕組みの複雑さと進化の力の大きさを感じました。

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