安倍政権が推進している「水道事業民営化」。
慢性的な財政難と水道管の老朽化などを背景としていますが、命に直接関わる「水」の安定供給に関わる政策です。
料金が上がったり、過疎地域が切り捨てられたり、断水の回復に支障が出るなど、様々な不安があるかと思います。
今回は、実際にあった過去の事例を紹介します。
失敗例1:フランス・パリでは再公営化
パリ市にはヴェオリア社、スエズ社という伝統的な水道事業者があり、2010年まで民間による水供給が行われていました。
ですが、90年代に料金が値上げされ、市民の不満が高まりました。
そして水道事業の再公営化を公約とする政権が当選し、水道事業は公共事業となりました。
民間企業に任せていると売上など財務面の管理ができないことも問題視されていました。
値上げと財務面の不透明性が問題となった例です。
日本ではただでさえ給料が下がっているのに、水道料金が上がるのは困りますよね。
失敗例2:コチャバンバ水紛争
2000年頃、ボリビア政府が経営難だったコチャバンバ市の水道事業を民営化しようとし、デモが起きた事件です。
政府はデモを受けて民営化を撤回しました。
この件でも、民営化と同時に値上げが行われる予定でした。
成功例
単純な民営化で、水道料金の値下げなど国民のメリットになるような結果になった例は、私の調べた限りでは見つけられませんでした。
世界的にも、再公営化の流れがある状況です。
他の懸念:水質悪化
利益は売上からコストを引いたものです。
営利企業に事業を渡すと、利益を増やすためにコストカットをするインセンティブができます。
大手建築会社の杜撰工事は度々ニュースになっていますが、水道管の工事でも同じことが起こる可能性があります。
まとめ
実際の例を見ると、民営化しても値上げが起こり、結局は再公営化に向かうという流れがあることがわかります。
営利化によるデメリットを無視することはできませんが、社会保障費と税収減で国の財政がカツカツなのも事実です。
水道事業のこれからは、民営化するかしないかという二元論ではなく、すべての選択肢の中から慎重に最適解を見つけることが求められると考えます。